犬山城天守には東南付櫓(とうなんつけやぐら)が一棟ありますが、さらに西北隅にも付櫓があります。
西北付櫓と呼ばれるこの施設はほとんどと言っていいほど注目されていませんが、天守に二棟の付櫓があるというのは犬山城天守を置いて他にはありません。
今回は西北付櫓について紹介したいと思います。
西北付櫓(せいほくつけやぐら)はどこにあるのか?
西北付櫓(せいほくつけやぐら)はどこにあるのかは、平面図をご覧ください。
西北付櫓は赤く塗ったところです。
南北二間、東西一間で西側へ張り出しています。
広さは東南付櫓(とうなんつけやぐら)の半分です。
外観
外観は下の写真のようになっています。
東南付櫓と同様に、屋根は切妻造(きりつまづくり)です。
反り屋根で本瓦葺(ほんかわらぶき)です。
ちなみに、一般の家庭では瓦葺のところも少なくなってきましたが、瓦葺のお宅でも桟瓦(さんがわら)という平瓦と丸瓦が一体になったものがほとんどで、本瓦葺きはなかなかお目にかかれません。
切妻破風(きりつまはふ)、梅鉢懸魚(うめばちげぎょ)が東南付櫓と同じ仕様です。
壁や軒裏も同じで、壁は白漆喰に下見板張り、軒裏は白漆喰の塗籠です。
西北付櫓は天守正面から見て左手奥にあって、立ち入り禁止になっているためあまり知られていない付櫓です。
この西北隅の付櫓には石落としがついています。
この石落としは袴腰型と呼ばれるもので、袴のような形をしています。
また、桃瓦も同じく屋根瓦の留蓋(とめぶた)に載っています。
西北隅と西南隅の2か所です。
基本的な仕様は東南付櫓と同じで、サイズが半分と考えればよいかと思います。
異なる点としては、石落とし(=足駄狭間(あしださま))が付いているというところです。
石落としについてはこちらに面白い記事をまとめてありますので、ぜひ一緒にご覧ください。
内部と外観を確認したくなる話ですよ。
内部
内部は下の写真のようになっています。
東南付櫓の半分しかないので、それほど張り出している感じはしません。
出窓のような感じです。
また、東南付櫓と異なるのは、敷居で仕切られてはいますが床の高さが天守と同じということです。
東南付櫓は一段下がっていますが、西北付櫓は高さは同じです。
内部から見て左手(南)、正面(西)にそれぞれ格子窓を設けています。
役割
西北付櫓の役割は東北付櫓の役割と同じで、本丸に攻め込んできた敵を迎撃するために張り出させ、死角をなくすことが目的です。
天守の西北隅ということは北側を流れる木曽川に面しています。
木曽川の向こう側は美濃国(みののくに)であり、犬山城は国境の城です。
美濃の国からの攻めに備え、防御を厚くするために付櫓を設けたと考えるのが妥当です。
しかし一方で、木曽川を渡って攻めあがってくるのは至難の業です。
今よりも水面が低い川だったことは間違いありませんが、川を渡ってこようとしても犬山城からは敵の動きが丸見えです。
そのため、実際には防御施設として万全だぞということを見せることによって、川を渡ることに対しての抑止力とすることができるのです。
石落としがダミーの飾りなのも抑止力を狙ってのことでしょう。
著者がなぜそのように考えるかというと、一つは石落としがダミーだということですが、もう一つは本当に防御施設として機能させようとしたら北側(内部から見て右側)にも格子窓を設けてもよさそうなものなのを、設けていないという点からです。
南に面しては格子窓があるので、北に面してもあってもよさそうじゃないですか?
付櫓が二つあるのは、”超” 珍しい。
他の記事で書いているので、そちらを参考に読んでいただきたいですが、犬山城天守には東南付櫓と今回紹介した西北付櫓の2棟の付櫓があります。
このように天守に付櫓が2棟ついているのは現存天守では犬山城だけ。
そしておそらく、他のお城でもこうしたところはほとんどなかったのではないかと思われます。
史料などが残っていないためわからないというのが実際のところですが。
二つの付櫓についてはコチラ↓↓↓の記事を。
犬山城天守の『付櫓(つけやぐら)』は、東南隅と西北隅に二つもあって実は珍しいのだ!
まとめ
犬山城天守の西北隅には木曽川の向こう岸から攻めてくる敵に対しての防御力が高いということを知らしめる付櫓があります。
サイズは小さいですが、石落としと合わせて抑止力は抜群です。
ということで、犬山城天守の西北付櫓についてのお話でした。
じゃあね🖐️
2019年10年08日
犬山城マイスター!たかまる。