天守の装飾は神社やお寺の装飾に比べると少なく、ほとんどが破風の部分に付けられていました。
その代表的な装飾が懸魚(げぎょ)と蟇股(かえるまた)です。
今回はこれらについて詳しく見てみましょう。
懸魚(げぎょ)
懸魚とは
まず、懸魚(げぎょ)とは、神社やお寺の屋根の破風 (はふ)に取り付けられる飾りのことです。
懸魚はもともと棟木(むなぎ)や軒の先を隠すためのもので、桁隠し(けたかくし)とも呼ばれています。
六葉(ろくよう)と呼ばれる金属製や木製の栓で取付けられます。
形によって
- 梅鉢懸魚(うめばちげぎょ)
- 猪目懸魚(いのめげぎょ)
- 蕪懸魚(かぶらげぎょ)
- 三花蕪懸魚(みつばなかぶらげぎょ)
などがあります。
当初、魚をつるしたような形だったので、魚を懸ける(かける)ということで「懸魚」という名になったとか。
懸魚は火に弱い木造建築を火災から守る意味で、水に縁のある魚をかたどって懸けられた火除けのまじないと考えられています。
鯱瓦(しゃちがわら)や鬼瓦なども同じです。
天守に使われる懸魚は、梅鉢懸魚、蕪懸魚、三花蕪懸魚です。
大きくは3種類です。
梅鉢懸魚(うめばちげぎょ)
梅の花を図形化したもので、五角形または六角形をしています。
小さく簡素なもので、小さな千鳥破風や切妻破風などに取り付けられます。
彦根城天守の切妻破風や入母屋破風は梅鉢懸魚です。
蕪懸魚(かぶらげぎょ)
野菜の蕪(かぶ)に似ているのでこの名前が付いたとされます。
胴体が細くくびれていて、渦巻きの形状が特徴です。
三花蕪懸魚(みつばなかぶらげぎょ)
蕪懸魚の変形で、三個組み合わせて一つの形にしたものです。
入母屋破風や大きな千鳥破風に取り付けられ、両端から鰭(ひれ)と呼ばれる若葉や波をかたどった飾りがついています。
兎毛通(うのけどおし)
唐破風に取り付けられる懸魚は兎毛通しと呼ばれます。
横に広がっていて厚みもあります。
なぜこのような名前になったのかは定かではありませんが、装飾としてはとても美しいものです。
下手すると見逃がしそうな懸魚ですが、形に注目してみたり比較してみたりすると面白いかもしれませんね。
蟇股(かえるまた)
蟇股とは
蟇股(かえるまた)は妻壁に付けられる装飾で、カエルが足を開いたように見える所から蟇股という名前がついたようです。古くは奈良時代からすでに神の梁組を飾っていたというような伝統的な装飾のひとつです。
蟇股には本蟇股と、板蟇股の二種類があります。
本蟇股は、内部に彫刻を入れたもの。透かしやくりぬき加工が入っていて装飾性が非常に高いものです。
板蟇股は、輪郭を削り出すだけの装飾です。厚い板でできています。
天守での例
本蟇股は姫路城天守や宇和島城天守に見られます。
板蟇股は丸亀城天守に見られます。
格調の高い蟇股と華やかな唐破風の組み合わせは、お寺や神社の建築で古くから使われた装飾です。
このような神社やお寺の装飾を天守に施すのは、城を手がけた大工が宮大工だったからということが大きいと考えられます。
まとめ
破風を飾る衣装としては懸魚と蛙股があります。
懸魚には梅鉢懸魚、蕪懸魚、三花蕪懸魚などがあり、蟇股には本蟇股と板蟇股があります。
ということで、破風を飾る意匠である懸魚と蟇股のお話でした。
じゃあね🖐️
2019年07月05日
犬山城マイスター!たかまる。